お互い「いいな」と思ってパートナーシップを結んだ相手でも、ちょっとした価値観の違いですれ違ったり、
喧嘩になったりすることは、よくあること。
家族や仕事、友人関係でも、自分と他者の違いを理解し認め合うことができればもっと楽なのに……
と思ったことはないでしょうか。
今回お話を伺ったのは、性格分類学®︎講師の飯塚そねさん。
よりよいパートナーシップを築くために、自分やパートナーの性格をどうやって知ればよいのか、
そしてその上で相手とどう向き合っていったらよいのかを性格分類学の観点からお伺いしました。
飯塚そね
性格分類学®︎ 講師
プロフィール
性格分類学®︎エニアグラムを用いて企業向け、個人向けと幅広く講座、研修、講演会などの講師、人
材コンサルタントとして活動中。
公式サイト:https://suniizuka.square.site/
Instagram:https://www.instagram.com/suniizuka/
ーー性格分類学、そして飯塚さんが専門としているエニアグラムとはどんなものなのでしょうか。
古来からさまざまな学者が唱えていた「性格類型論」という学問があります。
色々な類型論や性格にまつわる脳科学や発達心理学などの学問が凝縮されていて、
学問のジャンルを超えて性格について学べるのが性格分類学です。
ーーhaiweddingでは、現代におけるパートナーシップや結婚のあり方をテーマにしています。そういった点で、性格分類学はどう活かすことができますか?
性格分類学を取り入れることで、「この人はどういう人なんだろう?」と手探りで知ろうとしていたことをシンプルに知ることができます。
パートナーと生活していく中で、お互いの性格の違いを知ることがすれ違いの解消につながります。
私がよく言っているのが、「性格は変わらないけれども、成長する」。
脳は6歳までに完成するといわれていて、性格も同じ時期に確立し、6歳以降は変わりません。
よく「社会人になって変わった」なんて声も聞きますが、多くはストレス状態による言動の変化で、
それもベースである性格から現れてくるものです。
自分の性格を知ればその強みを活かすことができますし、持っているものをどう伸ばせばいいのか
ということにも繋がります。
結婚や夫婦に限らずですが、子育てや仕事を含め、性格を知ることで人間関係の摩擦をできるだけなくして
成長につなげてほしいと思い、性格分類学を広める活動を行っています。
ーーエニアグラムについて研究を始めたきっかけを教えてください。
もともと私は、大学で宗教心理学を専攻していたんです。
宗教に関わる信念や行動、人間関係などを心理的側面から研究する学問なのですが、
学んでいけばいくほど、もっと一人ひとりにフォーカスしたいという想いが強くなって。
どんな団体に所属していたとしても、人それぞれの想いや考えがありますよね。
心理学を学ぶ中で「性格って何だろう」と考える中で、大学図書館でエニアグラムに関する本を見つけました。
実は当時、自分の性格タイプを見つけるのに時間がかかっていたのですが、
「私の話が書いてある!」と思うほど、丸ごと理解してくれているような内容が
100ページ以上も書かれていることに驚いたのをよく覚えています。
すぐにのめり込んで、自ずと研究をするようになっていきました。
卒業後、一度は一般企業に就職し、
性格分類学で学んだことを活かしながら人材コンサルティングの仕事をしていました。
その後、結婚と妊娠出産を経て、プロとして独立して今に至ります。
ーーパートナーシップについて、もう少し深堀りして聞かせてください。パートナーの性格については、どのくらい知るべきだと思いますか。
パートナー同士であれば、やはり詳しく知りたいと思う方がほとんどだと思います。
ただ、相手を知るために性格分類学を学ぶというより、まずは自分を知ることが大事です。
ですので、順番としては後になります。
先に自分の性格のフィルターを知り、自分のコントロールを学ぶ。
相手を知るということは、自分との違いを知ることでもあるんです。
ーー性格による愛情表現の違いはあるのでしょうか?
エニアグラムでいうと、愛情表現も9つのタイプに分けられます。
たとえば辛いことがあったときに根掘り葉掘り聞いて欲しい人もいれば、そっとしておいて欲しい人もいますよね。
この2パターンだけでも大きく違うので、自分がよかれと思ってやったことでも「愛情を注いでくれない」と
捉えてしまうこともありますし、逆に「侮辱された」と思ってしまうこともあります。
性格の違いから愛情の捉え方を学べばコミュニケーションもスムーズになりますし、こんなに違うんだ!
とパートナー同士で会話もはずむのではと思います。
ーー家族という観点でいうとパートナーはお互いの意思で選ぶことができますが、たとえば子育てのように、親も子も互いに相手を選べない状況においては、性格分類学はどう活用できるのでしょうか。
子育ての相談はすごく多いですね。私も子どもがいることもあり、毎年必ず子育てセミナーを開催しています。
親も子どもを選べないし、子どもも親を選べない。その中でうまくやっていかないといけないし、
人間だからどうしても摩擦はあります。でも「親子なんだから、うまくやりなさいよ」というのは酷ですよね。
誰もが初めて親になりますし、手探りです。
子育てをする中でどうしたらいいのかわからない、誰も教えてくれないと思うこともあるかもしれませんが、
欲しい愛情と与える愛情は、実は性格によって異なります。
まずは自分自身がどういった愛情を頑張って注いでいるのかを知って、次に自分の子どもがどんな性格で、
どういう愛情を欲しがっているのかを知る。
親子でもそれぞれの違いがあるので、それを知った上で接すると子育ての見え方が全く違ってきます。
親が正しいと思ったもの、親が愛情を注いでいると自信を持って行っていたことが、
子どもから見ると意地悪に感じたり、愛情不足に感じたりすることもあるんですよね。
愛情を与え、欲しているつもりなのに、すれ違ってしまうのは悲しいじゃないですか。
そういったすれ違いをなくすために有効に使えるのが、エニアグラムでもあります。
ーーちなみに、パートナーやお子さんのタイプはどうやって知ることができるのでしょうか。本人が不在でもわかるのですか?
家族や子育てなど、相手がいる悩みについてのコンサルティングを行う場合は、まずはお話を伺って、
対象となる方の性格の仮確定をします。
両方のタイプを見た上で「あなたたちの関係はこういうトラブルがあって、こういうことで苦しんでいますよね」と
私が解説しながら、紐解いていくようなイメージです。
最終的にはお相手の方も自分で学んで、お互いが知識を持った上でパートナーとして歩むのがベストです。
ただ、そうもいかないこともあるので、まずは自分自身を知って成長を見せるのが
何よりも相手に対する示しになると思います。
実際に「パートナーがこれだけ変われたなら、自分も学んでみたい」と言って来る方も多いです。
ーー実際に、性格分類学を取り入れてパートナーシップにいい影響があった事例を教えてください。
私とパートナーの事例をお話すると、私の性格は感情型で、エニアグラムのタイプ4です。
個性的で芸術家タイプなんですね。対して、私の主人は思考型の楽天家タイプです。
感情型の私と思考型の主人はベースが全く違うので、ゴールは一緒でも考え方が違います。
たとえば喧嘩をしたとき、私は短い時間で濃厚に話し合って解決したい。
長引けば長引くほど、こじれてしまうタイプです。
でも主人は時間が必要で、なぜ喧嘩になったのか、頭の中で整理して落とし込むことでクリアになって、
相手を許せるようになるタイプなんですね。
時間が必要なので、早く解決しようとする私とぶつかってしまうことがあります。
でも、「私は待てない」「主人は待つ時間が必要」というお互いの性格を知っていれば、
譲歩する期間を決めることができます。
「1ヶ月や2ヶ月は待てないけれど、1週間以内にはまた話し合いをしよう」といったような期限を作るなど、
お互いの性格を知った上でのルールを作ると意外とスムーズになります。
色々な問題はありますが、エニアグラムを取り入れると問題に対する仲直りの仕方が明確で
具体的に落とし込めるので、日々活用できるのではないかと思います。
ーー飯塚さんは、普段から「セルフコンサルティング」を行っているのですよね。個人や企業とお話しされる中で、感じていることはありますか。
人それぞれ、抱える悩みがありますよね。
誰かに打ち明けても理解してもらえない、
言ったことによって自分のプライドが傷ついてしまうのではないかと考える方もいると思います。
セルフコンサルティングは、カトリック教会で神父様に話を打ち明ける小部屋のようなイメージ。
何を言っても自分に害がない、ただただ全部を吐き出せる場所を提供したいと思っています。
その中で、私はただ聞くだけではなくて、その人の性格を通して考え方の傾向や他の人との捉え方の違い、
自分のフィルターを通して捉え、固執している部分に気づいてもらうことを大事にしています。
たとえば「人助けをしたけれど、全然感謝されなかった。愛情を持ってやっているのに、
分かってもらえなくて苦しい」という人に対して、「もっとアピールしたら」といったように
一つの考えを押し付けてしまうと、納得できないし、腑に落ちないですよね。
そうではなくて、自分が愛情を振りまいているということは「実は自分が愛されたくて、その見返りを求めている」と
気づくことができれば、自分がやっていることに対しての満足につながります。
ーー飯塚さんから見て、今はどのような時代だと感じますか。日本のパートナーシップのあり方についても、感じていることがあれば教えてください。
ネットワークが広がって色々な発言はできるけれども、孤立することも多い社会だなと感じます。
昔はネットワークが狭かったからこそ、少し衝突してもこの人と何とかするしかない、と思えていた部分もあると思うんです。
パートナーとの出会い方も多様になったので、自分を表面的によく見せようとしたり、
少しでも違うと思ったらパッと次の人に切り替えたり、
恋愛において「この人じゃない」とずっと探し回ってしまう人も多いように感じます。
ただ、そこにときめきがあるかどうかは重要です。
愛情というときめきは、心理学上証明できないもの。
その上でお互いの性格を理解することができれば、ある程度どんなパートナーでも
うまく付き合っていく方法はあると私は思います。
自分のときめきを信じて、すれ違いがあったとしてもどうすればよいのかを考えるためのツールの一つが
性格分類学であり、エニアグラムですね。
その先の愛情を築いていくツールとして、たくさんの人に活用していただきたいと考えています。
――お話を伺っていると、エニアグラムのタイプを知るだけではなくて、その上でパートナー同士がお互い歩み寄る気持ちを持つことが大切なように感じます。
そうそう。
せっかくタイプを知っても「当たってた、面白い!」だけだと、ただの占いで終わってしまうのでもったいないです。
何で自分はこの性格なんだろう、他のタイプと一緒になるとチームとしてどう機能するんだろうなど、
ちょっと広い目で見てもらえると、家庭や職場での人間関係の平和を保つツールとして役立つと思います。
一歩間違えると「この人はこのタイプだから」という決めつけにもなりかねないので、
そこは気をつけていただきたいですね。
――最後に、飯塚さんがエニアグラムを広める活動を行う中で、どんな未来を思い描いているか教えてください。
「心理学」と聞いても実生活での活用の仕方がイメージできないかもしれませんが、
それを分かりやすく取り入れられるのが性格分類学、もっと細かくいえばエニアグラムです。
自分のタイプを知っていれば、コミュニティや組織で摩擦があっても原因がわかるので、
コミュニケーションがうまくいく可能性が高いんですね。
小さい単位でいうとパートナーや家族に当てはまりますし、社会や、国単位でも同じことがいえます。
自分の理解、そしてまわりの理解をすることで摩擦をなくして、よりよい未来に繋げていけるはず。
だからぜひ、心理学を日常生活に取り入れてもらいたいと思います。