絵を描くことは、食べることと同じくらい身近なもの。ありのままの自分を受け入れ、アートを通して感情や変化を表現していきたいーー
そう話すのは、アーティストとして活躍されているRina Lila(リナ・リーラ)さん。
日々変化しつづける考え方や感情は、作品づくりに大きな影響を与えていると話します。自分とまっすぐ向き合い、心の声に耳を傾けることで、アートを通して感情を表現しつづけています。
淡いピンクやイエロー、水色や紫色などの柔らかな色遣いは自然や温もり、そしてRinaさんの穏やかな人柄を表しているように思います。
感情を目に見えるアートとして表現されているリナさんの作品。
旅先での出会いや風景、その時の心情によって、がらっと雰囲気が変わることもあるといいます。今回は、そんなRina Lila(リナ・リーラ)さんを取材させていただき、活動の背景やストーリーをはじめ「愛」をテーマにお話をお伺いしました。
絵を本格的にはじめたのは4年前。当時、大学4年生だったRinaさんは、大学卒業後の進路について日々考えていたといいます。
周りが就職活動をしているなか、どこかに就職するという考えではなかったというRinaさんは直観に従いインドネシア・バリ島への旅に出ました。
Rinaさん:
「バリ島の美術館を訪れたとき、抽象画っぽい青の絵に出会いました。その時にはじめて、 絵を描きたいという衝動が湧きました」
帰国してすぐに、画材ショップへ足を運んだというRinaさん。それまでは絵を描くことどころか、自分を表現することが苦手だったといいます。バリ島から帰国してすぐに画材を揃え、さっそく絵を描きはじめました。
――それまでは「自分を表現すること」が苦手だったというRinaさんですが、なぜアートを通してご自身を表現するようになったのでしょうか。
Rinaさん:
「絵に夢中になることができたのは、絵の具の感触や筆づかいなど、とにかく描くことが楽しいからだと思います。この『楽しい』という感覚は今でも変わらないし、ずっと大切にしているものです。
自分の作品、鑑賞する作品に共通していることは『人間味のある、完璧でない絵に魅力を感じる』ということです。絵が生きているような感じがして」
――バリ島で絵と出会ってから思うままに絵を描きつづけ、活動の幅を広げているリナさん。「好き」で続けてきたことが「仕事」になっていく過程で、何か変化はありましたか。
Rinaさん:
「こう描かないと、こっちの色を使った方がいいのかなと、お客さまに喜んで頂くことを優先して考えることで、本当に自分が描きたいものから離れてしまうことは何度もありました。
でも、誰かを満足させることはできても、自分が満足できていない作品は何かちがう…
そう気付いてからは周囲の声に左右されず、自分が納得できる作品づくりを心掛けるようになりました」
今年の春、再びバリ島へ訪れた際には自分の中で変化が生じていることに気付いたといいます。
現地の方々との出会い、自然の生命力を表現しようと選んだ色は「原色」。それまでの作品は淡くて柔らかな色合いで絵を描くことが多く、原色での表現は新しい試みだったといいます。新しいもの、いつもと違うものを創るときは「戦闘モードに突入する」というRinaさん。周りからの評価も気になったけれど、自分の声を大切にしたかったと話します。
Rinaさんの軸となる「絵」の存在についてお話を進めていきました。
Rinaさん:
「私にとって絵を描く時間は、食べることと同じくらい身近なものです。アートを通して自分の感情を誰かに伝えたり、自由に表現することに幸せを感じます。コミュニケーションとしてもそうですが、絵を描くことで自分を知ることができたり、その時の自分の感情に気付くこともあります。
私自身どうしても頭で考えてしまうことが多いのですが、絵を制作している時は、余計なことを考えずに集中することができるので、セラピーのような存在でもあります。
プランを立てて絵を描くことももちろん大切なのですが、そうすると枠にとらわれているような気がして…
自分自身と対話しながら、感性にしたがって思うままに描くことが好きです(笑)
そうはいっても、最近はもう一度基礎から学び直したいなとも思っています。基本を学んで、身につけていくことは自信にも繋がりますし、とても楽しいです。今は、そんなフェーズにきているのかなと思っています」
作品を通してお客さんに届けたいことについて尋ねると、「感じる」という体験を届けたいと答えて下さりました。
Rinaさん:
「普段生きている中で、何かを見たり聴いたりして、五感で『感じる』という機会は意外と少ないと思うんです。
作品を手に取った方が絵をみて、何かを感じたり、気付いたりする機会につながっていたら嬉しいです。私が絵を描く時の感覚とは違うかもしれないし、受け取り方が違うのは当たり前のこと。どんな受け取り方でも、その人にとって何か大切なことを伝えられていたら、それだけで十分嬉しいです」
取材の後半は、haiwedding のテーマでもある「愛」についてお話をお伺いしました。
―― 単刀直入に(笑)「愛」ときいてどんなイメージをしますか?
リナさん:
「全ての人間が持っているもので、一言では言い表せないくらい大きなものだと思います。愛は身近に溢れていて、人それぞれ表現の仕方はそれぞれだと思います。
私の場合は、絵を描いている時に愛を感じたり、絵を通して愛を表現しています。自分への愛はもちろん大切だけど、一人だけでは補えない時ってあると思うんです。そんな時は、誰か安心できる人と話すだけで、そばに居てくれるだけで、愛を受け取ることができています」
自分への愛と他の人からの愛ーー
そのバランスをいつも模索しているとお話ししてくださりました。
様々なものごとに対して感情が揺れたり、吸収しやすいというRinaさん。手掛ける作品の1つひとつも場所や心情によって変化するといいます。
Rinaさん:
「去年の冬にスペインを訪れました。その時にみた景色、人との出会いは作品に大きな刺激を与えてくれました。
場所による『自分の変化』を受け入れることには時間がかかるけれど、少しずつでも、まっすぐ向き合っていきたいと思っています。自分への愛を大切にし、アートを通して輪を広げていくことで、自分自身を大切にできる人が少しでも増えていたら嬉しいです。」
最後に、今後の活動についてお話をお伺いしました。
Rinaさん:
「まだはっきりとは分からないのですが、2年後くらいに展示会を開きたいと思っています。アート作品だけではなく、映像や音など空間を通して楽しめるスペースを創りたいです。
不安や悩みなど、外のものを一旦忘れて、自分との対話を大切にできるような時間をお届けできたらいいなと考えています」
Rinaさんの今後の活動をお伺いし、五感を研ぎ澄まされるようなスペースを想像するだけで胸が高まりました。今回の取材を通して、軸をもち信念を大切にされているRinaさんの考え方はとても印象的で、心が揺れ動かされることが何度もありました。
自分への愛と他者からの愛ーー
当たり前ではない「愛」という大きな概念。一言では表現しがたく、分かりそうで分からない。そんな「愛」について、丁寧に一言ずつ言葉を紡いでくださったRinaさん。今後はアート作品だけにとどまらず、空間としてもRinaさんの世界観に入り込める日が来るのではないでしょうか。
Rina Lila (リナ リーラ)
兵庫県出身。2019年、バリ島一人旅中にふと入った美術館で「絵を描きたい」という衝動にかられ、独学で絵を描き始める。
アーティスト名の由来は「宇宙のダンス」を意味するサンスクリット語「リーラ」から。創造の自由や喜び、人間の不完全な部分、絶えず変化し続ける姿がインスピレーションに。自分への旅を続けながら制作している。
ホームページ:https://rinalila.com
Instagram:https://instagram.com/rina_lila_art
Reina Matsuda
2000年東京都出身
lala slowlife / WEBメディア「FLAT.」編集長
高校時代にH.O.P.E.の一員として活動し始めたことをきっかけにエシカル消費をライフスタイルに取り入れる形で発信している。大学進学を機に生まれ育った東京を離れ、自然豊かな九州へ。休学後、京都での生活を経て、「心の豊かさと自然の繋がり」を改めて学ぶ。心地よい暮らしをテーマに四季や五感を取り入れながら、”感覚を言語化する”ことを大切に、様々なカタチで表現している。
HP : https://lala-slowlife.com/
Instagram : https://www.instagram.com/lala_slowlife/
FLAT.公式サイト : https://flat-media.net/